2018年度は、本当に不思議で不可解なシーズンであった。一体全体、同志社ラグビーは強いのか、弱いのか・・と問われれば、結果として明らかに”構造的”な弱体振りを示した。これで2年連続大学選手権出場を逃し、関西大学ラグビーAリーグでも、8チーム中、昨年6位、本年5位の実績に沈んでいる。関西学院を強豪に育て上げた実績で大いに期待された「萩井監督体制」は、残念ながら不発で推移した。
この上期ほど期待される実績を示したシーズンは、ここ10年はなかった。何しろ新監督就任問題で明らかに出遅れ、最後までその出遅れが祟った昨シーズンとは雲泥の差のスタートだった。萩井監督の満を持しての2年目、常勤・佐藤ヘッドコーチの新規就任。更には、次期近鉄監督とも目される太田アシスタントコーチのサポート体制が引き続き継続され、今年度の指導体制は、一見盤石とも思えた。少なくとも同志社ラグビー部の指導体制は、我々同志社ファンには、近年稀な充実したものと思われた。
この体制の成果は、早くも春シーズンに成果を顕し、全国トップレベルと目される天理大学に力敗け(D17:45T)した以外は、実績から見る限り、十分全国トップレベルを狙えると思えた。(今年度の大学選手選手権で奮闘した)慶応大学にも勝利(D29:19K)し、前評判の高い明治大学に惜敗(D42:47M)するに至っては、期待するなと言われても無理からぬものがあった。
関西リーグ勢との練習試合においても、京都産業大学、関西学院大学、立命館大学、関西大学を撃破し、少なくとも天理大学には後塵を拝するものの、少なくとも春シーズンは単独で二番手に付けていたはずである。
そして、夏合宿の成果が問われる北の大地での打ち上げ試合(8月下旬)で、東海大学(D61:24T)、筑波大学(D50:40T)に危なげなく勝利するに至っては、同志社ラグビーファンの期待は否が応にも膨らんだ。
トーナメント戦の相手次第ではあろうが、今度の正月は空けて置く必要があると早くも思わせた。しかし、結果から勘案すれば、今シーズンの同志社の「相対的優位性」は、ここがピークだったのかもしれない。
その時点で、我々ファンから見ると不安はスクラム(特に第一列)とラインアウトのみ。スクラムで互角か互角近くで戦えば、速い展開の同志社ラグビーは敵を大きく凌駕するものと思われた。
HO平川選手④の突進、LO堀部選手④の安定したラインアウト。LO平沢選手③も大きく成長した。NO.8の服部選手③の守備範囲の広い柔軟で安定したプレイスタイル、破壊力抜群のファイアラガ選手②の成長、FL嶋崎選手の地味ながらボールへの強い執着と強力タックル。楽しみは満載であった。
問題のPRは、中村選手③・文選手②が怪我でシーズン当初は間に合わないものの、田中選手③や栗原選手②の成長で、何とかなるだろうと楽観視していたものだ。
SHに至っては、昨季に引き続き原田選手③・人羅選手②の二枚看板で盤石。SOは芳森選手④、古城選手③、南野選手③、更には永富選手④・安田選手④のコンバート説も加わり、大いに盛り上がった。
CTBは、永富選手④・山口主将④で不動かつ万全。司令塔のインサイドセンター永富選手は、ゲームメーカーとして投げて良し、蹴って良し、走って良しで言うことなしの存在だ。実に幅広くエリアが見える!山口主将の豪快強靭な縦突進は、痛快極まりない破壊力を持っている。この二人の4回生は正にチームの中核中の中核として活躍して来た。
WTBは、高野選手④、江金選手③、山本(雄)選手の何れを採っても文句なし!ポイントゲッターとして頼もしい限りであった。FBは、安田選手④の定位置だろうが、山本(翔)選手が急浮上。キッカーも安田・両山本選手と揃った。永富選手も蹴れる。
上期シーズン、同志社の集散の良さ、特にダウンボールと2人目の寄りの良さは特筆ものだった。これが、ラックからの速い球出しに繋がり、フォワード・バックス一体となった小気味良い「高速展開ラグビー」を可能とし、同志社の強さを天下に知らしめた。防御網も同志社らしからぬ(?)早くて速い上がりと強力な低いタックルで見事に機能していた。
ただ、問題(←かどうか不明だが‥)は、ここ(夏合宿終了時)からだ。
何故かシーズン突入前の対外(練習)試合が、夏合宿終了後からシーズンインまで封印されたのだ。トヨタとの合同合宿、近鉄との練習試合が敢行されたとの噂も入ったが本格的な練習試合では無かったらしい。怪我を恐れず競い合い鬩ぎ合う中での成長とは、別の路線が選択された。
秋シーズンは、関西リーグ上位校との対戦から開始されるので、夏合宿の仕上がりの良さを温存するために選手の怪我を避けたものとしか思えなった。おかげで選手の怪我は少なかったものの、シーズンイン前の一か月間、他チームと切磋琢磨することなく関西リーグ戦にふゎーと突入した感が強い。
同志社ラグビーが、孤高に思えた。そこには、前年度6位のチームの「死にもの狂いのチャレンジャー精神」は見られなかった。守りの姿勢としか見えなった。
結果は、ご存知の通り関西大学Aリーグ開幕3連敗。贔屓目かもしれないが、明らかに同志社が格上の力を持っていると思われた関西学院大戦、京都産業大学戦を僅差の逆転負けで落とした。
しかも、肝心要の「勝負時」を消極的な「守りの姿勢」で逃がした。「絵に描いたような典型的逆転負け」だった。何とも言いようのない「勝負弱さ」だった。開幕から7試合中の3試合を落とせば、大学選手権出場は早くも他力本願となった。
ただ、実はそれからが本当にまずいのだ。大学選手権出場に首の皮一枚繋がっているだけの苦しい状況下、チーム力は、何故か決して上昇することはなかった。最下位争いをしている全敗か1勝に留まっている大阪体育大学(D31:24O)、関西大学(D38:33K)にさえ、接戦を演じるに至っては、悲しい限りの何物でもなかった。接戦のハラハラ感と言うより、しらけムードが同志社ファンに蔓延した。
何故か強力なダウンボールも速い寄りも影を潜めた。
開幕3連戦を今シーズンの最初のピークに設定したのは当然であろうが、次のピークが訪れなかったのだ。それは、開幕3連敗の後遺症だけではなく、私は何か別のものを感じていた。
一言で言えば、正直、「ガバナンスの問題」であろう。信頼感、共通のベクトルに、歪んだものを私は何故か感じ取った。ほとんどのジュニアリーグメンバーは、絶好調で大活躍しても、何故か決してAに登用されることなく一線を画された。
もっとも、この今シーズンの結果は、同志社ラグビーの構造的問題が噴出したものだと認識すべきであろう。私個人の持論だが、残念ながら現代スポーツは「カネと強さ」が比例していると考えている。特にリクルート問題(入学時の学力評価減免選抜・学費寮費免除・奨学金・授業出席配慮・卒業資格配慮等)、常勤監督・コーチの給与等の処遇問題、特に留学生採用に端的に顕れている。どうも風評だけとは言えない現実が、嗅ぎ取れるのだ。
今年話題となったアメラグの「悪質タックル問題」で一番驚いたのは、監督他専任コーチ(11名)全員が日大正職員だったことである。更には、その地位を死守するための勝利第一主義の過当競争が全面的に行われている現実である。
私自身は、卒業生40人の内、毎年のトップリーグに進めるのがたかだか4~5人程度の現実を顧みれば、所謂「文武両道路線」を選択するしかないと思っている。学生スポーツとして最終的に誇るべきは、優秀な学生の育成であり、結果として卒業生の就職先ではないのか。4~5人のために残り9割が犠牲になるのは、何とも許容し難い。
ただ、この考え方自体が既にガラパゴス化しており、ジャパンを含め「強いもの(チーム)が正義」だと思われるのを百も承知している。同志社のラグビー部員170名、大多数の幸せを考えれば文武両道路線が正当だと考えるのは、古くさいのだろうが・・。この考えが真っ当と考えて貫徹すれば、同志社ラグビーは、この先20年は勝てないだろう。それで良しと言えないのが辛い。(F)
(注)当然のことながら、上記は個人の見解であり、DRFCを代表するものではありません。賛否両論があり、一概に正否を短絡的に結論付けることが出来ないことも承知しています。ただ、学校当局は、更に選択と集中を進めるべきだと考えます。
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