昨シーズンの同志社大学ラグビー部は、関西大学ラグビーAリーグ第5位に終わり、2年連続大学選手権出場さえ果たせず、不本意の中、2018年度の日程を終えた。
特に思いもよらぬ開幕3連敗で絶望的なスタートとなったが、その後の下位と目されるチームとの対戦でも勝つには勝ったものの、会心の勝利には程遠く、同志社ファンは疑念と不信を抱きながら失意の下に長い長い冬を過ごして来た。夏合宿終了までは破竹の勢いだった同志社に、昨秋、一体何が起こっていたのだ?
昨秋シーズン本番、傍から見るにチーム内のいたたまれない程の雰囲気の悪さを感じた。決して一枚岩ではないことを、薄々ながら一部のファンは嗅ぎ取っていた。シーズンの内容が、開幕3連敗の後遺症だけではないことは明らかだった。そう!明らかにガバナンスの問題が噴出し、少なからず外部にも露見していた。
冬シーズンには首脳陣の総入替も噂されたが、ある意味、何故か意外にも温存(?)された。所詮は噂レベルの他愛無い話、我々の詮索すべき範疇のことではないが・・。
自らのプレーでチームを牽引するタイプの山口主将から、温厚で大人のムード漂う山本新主将への交代に、同志社ラグビーファンは一縷の望みを抱いた。しかしながら、新年度(2019年度)への期待は決して高くは無かったというのが、正直、ファンの平均的な気持ちだったであろう。
平成最後の月、2019年度春シーズン突入。4月14日の関西大学A戦に出向き、チームの雰囲気の激変ぶりに(良い意味で)驚愕した。昨秋の汚泥のような暗澹たる雰囲気から一転、なんと明るく前向きかつ闊達。溌剌としていたチームのベクトルは、明らかに右肩上がりを示していた。
スタッフに原因を聞けば、山本新主将の話し合い路線が功を奏し、更に4回生の一致団結がチームの雰囲気作りに大きく貢献しているとのこと。また、図らずも11月末に昨シーズンは終了したが、早くも12月には新\チームのリスタートが実質的に切られ、監督交代の遅れで出遅れた前年冬とは全く練習量が異なる冬シーズンを選手達は過ごして来たとのことであった。
事実、仕上がりの早い同志社は、春シーズン当初、関西大学A、関西学院大学A、立命館大学A、大阪体育大学Aに大勝し、予期せぬ結果に同志社ファンは大いに留飲を下げたものである。正に「再び同志社ラグビーに春が来た!」と思いせしめた。「こりゃ、常勝天理を喰えるかもしれない。」とも・・・。
確かに、一番心配だったスクラムもそこそこ安定して来たし、攻撃面では、ラインアウトもモールもダウンボールも集散もまずまず・・。フォワードの健闘がバックスに生きた球を供給し、速い球回しからバックス陣が生き生きと躍動し、トライに結ぶ付ける攻守バランスの良い戦法が光った。防御システムもほどほどに機能し、いつもの「春シーズンの荒い点取り合戦」は比較的影を潜め、一方的な同志社の勝利が目立った。
ただ、不安を感じたのは、選手のフィットネスがさほど向上した様には思えなかった点である。あっと思う程、ガタイが大きくなった選手は、私が見た限りでは皆無である。体重に併せて走力や筋力等の基礎データが大きく向上したとは傍目には到底思えないのだ。実際は、どうなのであろうか?
どうも「小手先のテクニック」でボールを繋ぎ、相手をかわしている様にしか思えないのだ。トップスピードで心底相手の芯にぶち当たっているとは到底思えないのだ。単にチームの仕上がりが早いだけだったのか・・・。
この心配は、ある意味、5月19日の奈良県ラグビー祭で的中した。いつもながらと言って良いほど天理大学Aは、今年も明らかに「相撲取り型の体格」でガタイが大きく柔らかい。栄養も筋トレも充分尽くされている感じだが、同志社は見るからに身長体重とも低く小さく、ひ弱い印象を受けた。
天理大学が、トップスピードでズバーンと入って来てぶち当たるのに対し、同志社大学は球回しのスピードこそ遜色ないものの、決してトップスピードとは言い難く小手先のテクニックで悲しいくらい胡麻化している様に見えた。
この懸念は、その後の京都産業大学A、摂南大学Aとの敗戦にも繋がった。春シーズン終盤、ファンの気持ちは再び地獄に舞い戻った。技術面ではいろいろあるのだろうが、私には、「当たりの強さ」の差が命運を分けたように思えてならない。
7月14日の春シーズン最終戦の宝ヶ池球技場(京都市)。4月にWスコアで大勝した立命館大学Aとの再戦である。同志社ファンは、期待よりも不安を大きくして観戦に臨んだ。
結果は、D35:R19で同志社の勝利であったが、試合前に監督・コーチが何度も督励された「チャレンジャー精神」がプレー面で発現されたとは到底言い難かった。溌剌同志社がどこかへ行っていた。
試合全体としては、終始フォワード戦を仕掛けて来た立命館Aペース。後半終盤こそ、同志社フォワードが奮闘し勝利を掌中にしたが、絵に描いたようなバックス陣のトライは見られなかった。
同志社は、自虐的に申し上げるならば、「所詮は前年5位、前々年6位のチーム」である。負けても何も失うものはない。特に春シーズンには・・である。
チャレンジャーには、「思い切り」の良い一か八かの戦法とプレーが求められる。どうも私ども(私だけ?)同志社ファンには、地道に王道を貫けば地力勝ち出来るような錯覚がある。今の同志社は、まともに勝負したら、少なくとも天理、明治、帝京等の大学上位校には勝てないだろう。
チャレンジャーには、ハイリスクハイリターンが求められる。奇策でも良いから失敗を恐れず、思い切った大向こうを唸らせるようなプレーを仕掛けてもらいたいものである。
テクニックで胡麻化さず、バーンと相手の芯にぶち当たる気概が欲しい。その結果としてダウンボールすればよい。ダウンボールを考え過ぎて相手を軟に交わしながら当たってどうするんだ!大失敗しても良いじゃないか・・!
かくして、同志社ファンの心境は、春爛漫の凱旋気分から再び心の凍る冬の時代に舞い戻り、春シーズンを終えた。
と嘆きつつも、秋シーズン本番は、あと一ヶ月余りでやって来る。
閑話休題、表題の今年の同志社の件。恐らく決して「そんなに強くはない」と言うのが回答になるのだろう。このまま行けば、やっと大学選手権に出れるレベル(関西3~4位)だろう。一方、「そんなに弱くはない」と言うのももう一つの答えでもある。即ち、正にこれから次第なのである。
そもそも大学ラグビーはレベルが低い。一ヶ月もすればどうにでもなる。大きく豹変す可能性があるのも事実。
チャレンジャー云々は、山本主将以下、4回生の団結に掛かっていると信じる。要は、今後問われるのは昨秋シーズンと同様に「ガバナンス問題」である。決して昨秋を繰り返してはならない。それさえ無ければ、いくら悲観的に見ても大学選手権出場(4枠)を逃すことはない。(F)
注:当文章は個人的見解です。DRFCを代表する意見ではありません。
文中の内容と写真とは、一切関係ありません。
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