負ければ、同志社の大学選手権出場への途が実質的に途絶える試合であり、下手をすれば入れ替え戦も・・との不安が過ぎる終盤最大の山場「京都産業大戦」である。同志社は、これまで(昨シーズン)下位校との対戦で2勝2敗であり、残すところは昨年度1位・3位・4位校との対戦である。絶対に負けられない試合である。
同志社は、これまで雨中のフォワード戦に苦闘して来ただけに、同志社ファンは、この日の晴天を心から歓迎した。やっと晴れた!と言う心境だ。相手ボールスクラムとモールでは、京産大にかなりやられることをファンも予め覚悟していた。強みの展開ラグビーが可能な「晴天の絶好のコンディション」は、天が「正に同志社に味方した」としか思えなかった。
フォワード一辺倒の京産大に対し、堂々とバックス勝負で臨むことが出来るグランド状態。陰鬱なネチネチフォワード戦なら京産大優位、球が大きく動けば同志社優位。当然今日は晴れだから・・・と勝手に思い込んだ同志社ファンは多かった。
まずは、敵陣で試合を進めることが肝心だ!大阪市の鶴見緑地球技場は、ややマイナーな施設でこじんまりとして裏淋しいが、それでもメインスタンド(向こう正面のスタンドなし)は9割方埋まった。グランドから見上げれば、6:4くらいで同志社ファンが多いように感じたが、むしろ試合前から(更に試合中も)、京都産業大学応援席が大いに盛り上がった。
同志社サイドの応援は、学生諸君も含め試合前から大きく負けていた。京産大サイドからはエグイ(←関西弁?)おっちゃんの声援(と言うより野次)が乱れ飛んだ。すでに試合前から同志社にとってアウェイ状態の雰囲気となっていた。
試合前の練習でも、同志社が練習のための練習を淡々とこなしたかに見えたのに対し、京都産業大学は、優勝決定戦でもあるかの様に気合が充満していた。試合前練習と言えども、同志社より当たりが数段強く感じられた。迫力が違った。本気モードだ。傍から見るに、何故か訳も分からぬ執念と怨念に満ち溢れていたのだ。この意気込みの違いは、そのままキックオフ直後から早くも現れた。同志社は防戦一方、前半4分、8分、12分、17分と4分おきにトライを喫した。しかも難しい角度から適確にゴールキックを決められたのだ。前半18分には、D0:28Kと一方的な試合展開となった。同志社ファンの淡い期待は、前半20分で早くも霧散した。
ひっくり返すには5トライ以上。同志社ファンに厭世感が漂った。京都産業大学はフォワード勝負を徹底し、隙あらばバックスに大きく展開する想定どおりの展開。同志社が、ゲームプランとして、フォワードで競らせながらバックスで大きく左右へ展開という得意の高速展開ラグビーを目指してたことは明白だった。
ただ、私に言わせれば、乗りに乗り神懸りした京産大と同志社とでは「当たり」が違った。京産大は、100年の恨みを一気に晴らすか如く、怪我も恐れず本気でぶち当たってきたのだ。同志社は、次に繋ぐためのテクニカルな当たりしか見せなかった様に思えた。戦術以前の問題だ。
この執念と気合の違いが得点を大きく分けた様に思えた。セットプレーのみならず、ブレークダウンで大きな差がついた。
同志社は受身一方。下がりながらの同志社ディフェンスは全く機能せず、さして強力とも思えない京産大バックスにさえ、面白い様にラインブレークされてしまった。思いもよらぬ大差に、浮ついた同志社は無理して廻し、ミスにミスを重ねた。
ラグビーが恐ろしいのは、個人プレーの積み上げながら「組織攻撃・組織防御」が強く求められる点である。毛利元就の「3本の矢」の3本でなく「15本」番である。機能すれば、想定以上に極めて大きな力を発揮するが、1+1+・・・と15回重ねても15人分の力にならないことが往々に生じる。正にこの日、同志社の組織攻撃と組織防御は全く機能することなくノーサイドを迎えた。特に同志社の防御網は、ハッキリ言ってズタズタだった。悲しいくらいに「混乱の極み」であったのだ。
D17:73Kと誰もが予想し得ない大差で同志社は敗れた。フォワード戦もバックス展開でも、接点でも、ダウンボールやセットプレーでも全てと言って良いくらい、同志社は大きく負けていた。前半中盤のバックス衆の3トライでさえも、もはや遅しの空虚さだけを感じた。
某スポーツ新聞Web版に「試合終了後、誰も悔し泣きすることなく淡々とクールダウンしているのには少々驚いた。」と図らずも女性記者に書かれた。
ただ、これは全くの誤解である。私はグランドに居て、選手が死に物狂いで戦って来たことを良く理解している。それを体現できない悲しさと空しさがあった。
試合途中から茫然自失になっていただけなのだ。特に野中主将などは、慢心創痍で悲壮感溢れる戦いを挑んで、願い適わず奇しくも敗れ去ったのだ。
決して選手を責めてはならない。結果こそ出なかったが、敢えて選手の健闘を讃えるべきだと思う。
ただ、一番の問題は、試合中、混乱の極みに陥った同志社フィフティーンを復元しようとするエネルギーが、選手にも監督コーチ陣にもほとんど見られないのである。傍からみれば、そうとしか感じられないところに深刻さが垣間見られた。メンタル面の弱さとガバナンス体制の欠如が如実に顕れた。私に言わせれば、後者が最大の敗因である。叱咤激励し、鼓舞する者が見られない。
「たまたま勝つことはあっても、たまたま負けることはない。負けたのには、必ず原因と理由がある。」とマリナーズ時代のイチロー選手が語ったとの記事(日経新聞)を覚えている。
負けた根本原因を思い浮かべぬではないが、同志社ファンの一人として、シーズン中は言いっこなしである。今、選手は懸命に戦っている最中なのである。最終戦まで、応援するのみである!(文責:F)
↑ 堂々と敵バックスラインを突破するCTB高井選手④。ただ、フォローがなく孤立すること多々。
↑ 終盤も残すところ二戦。勝利あるのみ!雄々しく立て同志社!!
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