第100回慶應定期戦(5月開催)を受け、今年度は変則的に開催された同志社ラグビー祭は、運悪く(予想通り?)梅雨空の下で開催された。空梅雨気味だったのに、同志社田辺グランドは、よりによって生憎の空模様。時に強く、時に弱く利休鼠の雨がシトシトと断続的に降り注いだ。
お蔭で観衆は例年の半数。例年完売する記念Tシャツも売れ残った。防滴ではあるが、防水ではない機材を防水布で包んでの撮影は、少し侘びしいが、ま、これも勝敗次第だ。濡れると数万円の点検料が掛かるので、こっちゃ死に物狂いだが、思わず試合に見とれてしまうのが世の常である。だが、当試合では、残念ながら見とれてしまう機会が少なかった。
天理の前評判は極めて高かった。早稲田・筑波・立命・京産・関学を圧倒、山神前監督をして「帝京・東海と互角以上かもしれない。」と言わしめるほどであった。
ただ、前日の対天理大B・C戦(天理大学グランド)で同志社が思わぬ健闘。不安視されていたスクラムで押し勝ち、起動力のあるバックスは思う存分走り廻り、BはD41:10T、CはD34:12Tで予想外の完勝を果たした。このため同志社ファンは、京産大戦で完敗したことなんかコロっと忘れて、「メンバーも揃い、案外やれるのではないか」と内心密かに期待していたのだ。怪我やテスト起用(試用)で、これまでなかなか主力メンバーが揃わなかったが、ここに来て所期するメンバーが揃って来た。
怪我のLO服部選手②・CTB阿部選手④が復帰、まだまだCTB永富選手③等の復帰待望の選手もいるが、何とか遜色のない先発レギュラー候補が出揃った。もうテスト起用なんて悠長なことを言ってる余裕はないほど春シーズンは深まったのだ。同志社ファンは一抹の不安を抱えながらも、面白い戦いになると期待した。
問題は、弱いとされるスクラムでどこまで耐え切れるかである。しかも雨中の戦いでフォワード勝負が目に見えている。過半のファンの感心はそこに注がれた。前半、キックオフ早々は、やや劣勢ながらもフォワード戦は、ほぼ互角に戦いでスタート。だが、前半5分くらいだっただろうか、注目のファーストスクラム。組んだ瞬間には、「お、同志社フロントが頑張っている。」と感じたが、それも束の間だった。
スクラムも3~4回目になると優劣は傍目にも明らかになった。いわゆる電車道状態となり、捲り挙げられて押された結果、バインドが解けるのか同志社のペナルティーが続発した。もはや試合にならなくなった。
勝負の帰趨は、早くも前半10分少しで決した。どう考えても同志社の勝ち目はなかった。スクラムが余りにも劣勢で試合が組み立てられない。フォワードの集散・スピード云々以前に、天理の当たりは数段強烈だった。あくまで低くぶち当たって来た。同志社も逃げずに真向勝負で受けた。しかし、前日のB・C戦では倒れるのが天理大ばかりだったが、この日が全く逆となった。
同志社フォワード陣も負けずとぶち当たったが、天理は自信に満ちていた。みぞおちあたりに強く当たって来た。真向勝負しただけ同志社フォワード陣のダメージが大きかった。何人が担架で運ばれただろうか?おまけに救急車まで呼ぶ始末となったのだ。
チーム力の差は歴然だった。特にフォワード力の差は歴然であった。スクラムとモールの力の差は誰の目にも明確で、手の付けようがなかったのだ。フォワード戦で爆死、メンバーが揃ったにもかかわらず、京都産業大戦の悪夢が再現した。
同志社の得意の強力バックス陣の出る幕がなかった。いつもなら速い展開からFB安田選手③が、スパッと縦に抜けたり、WTB鶴田選手④がライン際を切り裂いてトライを重ねるところであるが、それ以前の問題であった。やはり、問題はスクラム、その原因は第一列にあるように思えた。
ファンの間で好評で伸び盛りのPR木田選手④・PR田中選手④も力不足が露呈した。これが更に負傷(一時的?)退場に繋がった。天理が一応の完成形の高いチーム力を誇ったのに対し、現時点で同志社フィフティーンは、まだまだ発展途上なのであろう。
山神同志社が、劣後する体格を補うためフォワード・バックスス一体となった高速展開ラグビーを目指し、大学選手権ベスト4という大きな果実を手に入れた。ただ、帝京・東海両大学が外人(留学生)選手を中核にフィジカル面で抜きん出ており、大きな壁となっているのも周知の事実。この壁を打ち破るため、フィジカルと高速を両立を目指し、フィジカル面の大幅強化に舵を切ったのが、萩井新路線であると理解している。あくまで、「その上」を目指しているのだ。
何も恐れることはない。迷うことはない。まだまだ、途半ばに過ぎないのだ。時間は掛かるだろうが、帝京・東海・天理の背中は見えている。どんどん邁進して行って欲しい。今年度、練習が厳しく、激しい当たりを要求されるので怪我人が増えたと何人かの選手から聞いた。正にこの路線で良いのだと私などは一人ほくそ笑んでいる。今が一番苦しい時なのであろうが、一皮向ける時期が近づいているのだ。
先般のワールドカップのジャパンの活躍により、各大学チームとも外人選手導入や筋力アップ・栄養管理が(以前からのトレンドだが)大流行の様である。各大学ともミニジャパン、ミニトップリーグを目指し、フィジカル強化を目指している。ただ、我が娘をして「気持ち悪い!」と言わしめるほど、浮世離れして来ているのも事実でもある。どう見てもラグビー選手に比べ品がないように見えたサッカー選手の方が、今では、まともに見える昨今である。(←私見です。非難ご無用)
個人的には、ワールドカップルールは大英帝国時代の遺物であり、オリンピックルールを基本とすべきと考えている。日本独自の大学ラグビーがあっても良いと思うのであろうが、こんなガラパゴス的な考えは通じないのも残念ながら承知している。(納得はしていないが・・。)
ただ、犀は投げられたのである。一点の迷いもなく、フィジカル重視路線を貫いていただきたい。正に今、同志社ラグビーの大転換、フィジカル重視路線への大転換が行なわれているのだと思う。一切の迷いなく突き進むべし!同志社ファンは、ちょっと心配しながらも間違いなく応援しているのだ。ベスト4から更に上へ行くための過渡期であり、我慢我慢の時期であるのを充分に承知しているのだ。スピードや戦術、テクニックで適うほど甘くないことは嫌というほど知っているのだ。
それにしても天理大学は実に強かった。テクニックでかわせる相手ではない。筋力トレーニングに加え、栄養管理面でも上回っているのが相撲取りのような大きく丸い体に表れていた。帝京・東海にますます似て来た。
特筆すべきは、ディフェンス力。地味ながら、正にこれが一級品である。そのベースは、激しく厳しい「当たり」の強さにある。
天理の外人選手、特にNO.8のマキシ選手③は本当に凄い。間違いなくジャパン候補であろう。しかも傍から見た限りではあるが、明るく楽しい前向きの性格のようだ。そうだ、彼に限らず、天理の選手は、実に礼儀正しく気持ちが良い。好感度大である。同志社より声がよく出る。
前日のB・C戦後、選手への小松監督の選手への指示を聞いた(聞こえた)が、2連敗直後だったが、実に素晴らしい対応だった。(内容厳秘!)これだけでも天理はホンモノであり、強敵であることがよく分かる。
商売柄(=写真撮影)、敵陣サイドにいる事が多いが、スポーツマンとして、そして組織人として、少なくとも春シーズンでは天理の選手が断トツに素晴らしい。もっとも、その点では同志社とて負けてはいないので安心している。危ないのは、関東では・・・、え~と止めておきます。(F)
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