試合前、何故か迫力のない今年の天理フィフティーンを見た
試合前、ピッチで写真撮影のポジションを確保しようと天理サイドのごく近くに移動したが、正直、少々驚いた。「え、今年の天理はこの程度・・・」
体格に関することである。意外だった。例年なら相撲取りの様に肉付き豊かで圧倒的迫力を持つ大型天理フィフティーンが、何故か妙に小振りで威圧感さえないのだ。
「相撲取りの様な体格」とは決して「筋肉隆々」と言った様なものではない。「あんこ型」の意味である。フォワードのみならずバックスさえも大きく強く柔らかい感じの体格で、帝京や明治に共通する。フィジカルトレーニングと栄養管理がうまく融合した印象の姿・形である。当然、人的かつ物的面で莫大な金が掛かってるはずだ。
直前に京都産業大学の留学生を見たせいか、余計に4人の天理留学生の見た目の迫力のなさが妙に心の隅に残った。決して雲を突くような威圧感溢れる大男ではないだ。こりゃ、コワクないぞ~。
ただ、天理のチーム全体としては、同志社よりは上背・体重とも、かなりデッカイ印象を受けた。
最大の勝因はディフェンスか?
試合経過は、既に皆様がご存じの通り、DRFCの会員専用ストリーミング(申込要)や関西協会・同志社ラグビー部公式のYouTube等で放映された通りである。
ま、言うまでもなく、関西大学春季トーナメント1~2位決定戦、同志社が天理に35:19で堂々と勝利したのだ。まぐれでも何でもない。正々堂々、真っ向勝負し、実力で勝ったのだ。
試合は、終始とまでは言わないが、全般的に同志社のペース。敵陣で6:4(←ちょっと言い過ぎかも・・)くらいで同志社が優位に戦ったと思われる。
その要因は何か?
試合中に一番目についたのは、同志社のラインディフェンス時の「同志社らしからぬ(?)飛び出しの良さ」である。オフサイドを恐れずギリギリに飛び出している印象である。こんな早くて速い飛び出しの同志社を見たのは久方振りである。
関西大学戦、京都産業大学戦とは、はるかに違う長足の進歩を見せつけた。恐らく練習の賜物であろう。
お蔭で天理はアタックが後手後手に回り、同志社のライン裏に抜け出ることも少なく、止む無くキックに頼らざるを得なくなった。いつもの自陣ゴールライン近くから廻して来る余裕など全くなかった。
キック戦では、この日先発に抜擢された嘉納選手②の大きく長いキックで蹴り勝った。
予想もしなかったスクラムの大健闘!
更に全く予想だにしなかったのが同志社の「スクラムの大健闘」である。天理は明治との練習試合でスクラムで圧倒した旨聞き及んでいたので、フォワード専任コーチのいない同志社が優位に立つなんて誰も夢想だにしなかったのではないか。
ダイレクトフッキング等でどこまで逃げ切れる(誤魔化せる)かを、大方のファンは予想したはずだ。
然るに強豪スクラムの天理相手に少なくとも互角の大健闘なのだ!
やはり、左PR山本選手②の復帰が大きいのだろう。完全に相手㏚NO.3に組み勝っていた。
右PR李選手③の健闘も光った。やや押され気味にも感じたが、意外にも(?)強気の押しが目立った。いつもは弱気そうな顔付きをする癖があるが、この日は李選手らしからぬ(?)負けん気が顔面に溢れ、凛としたたたずまいだった。
スクラムを踏ん張れば勝てる!
私などは、ラグビー経験も一切なく技術的なことはサッパリわからないが、フォワードが踏ん張れば今年の同志社は必ず勝てると確信出来た試合だった。
何故ならフォワード・バックス一体となった同志社の幅広高速展開力は、少なくとも現時点では、前年全国王者の天理大学を間違いなく凌駕していたと確信をもって言えるのだ。
当然、フォワードの要は、LO南主将④である。口数は少ないが、身をもってチームを引っ張る。この日もピッチは猛烈な高温多湿だったが、決してへたり顔は見せない。
イーブンボールへの寄りも同志社フォワードは速かったし、無理なく綺麗なダウンボールをしていた。当たりでも決して負けていない。試合後、きっと首脳陣は、「ブレークダウンで天理を凌駕した。」と言うことだろう。
こうなれば、同志社のコントロールセンターSH田村主将④の独壇場である。素早く着実正確に、時に小さく特に大きく球を散らした。同志社らしいテンポの良いリズムを継続させた。
見事な一級のバックス陣
密集からの速いテンポの球出しが連続すれば、同志社バックス陣は鬼に金棒である。何しろ同志社のハーフ・バックス陣は役者が揃っている。
先発が初めてとは到底思えないSO嘉納嘉納選手②は、実にエリア全体が良く見える。心憎いまでの正確なロングパスで、相手ディフェンス陣を翻弄する。大きく長いキックで手薄な天理のエリアを攻め上げる。敵陣から大きくキックされたボールの落下点には、必ず嘉納選手がいた。キック戦でも決して蹴り負けない頼もしさを見せた。
SOからインサイドセンターへ初めてコンバートされたCTB西村選手③は、キョロキョロと言って良いほど周囲を良く見渡している。第2の司令塔でもある。
小柄なのでスクラムサイドからの縦ラインの防御を心配したが、全くの杞憂に終わった。
強気丸出しの西村選手は、地味ながら防御にも攻撃にも全く卒のないプレーを繰り広げる。この試合にもインサイドセンターで重用されたのも十分理解できる活躍だった。
若手がバランス良く出藍して来た!
CTB岡野選手②、このところやや目立たない印象だったが、彼がやはりバックス陣の「重石」となっている。2回生ながら、既に貫禄が漂っている。ディフェンスにもアタックにも派手さはないが、図抜けた安定度を誇る。
抜群のボールキープ力、もはや同志社バックス陣の大黒柱だ。絡まれても必ず味方のサポートが来るまで決して倒れない。
WTB芦塚選手②は、ワタシャ髪型こそ嫌いだが、攻守ともに大好きな選手の一人である。面構えが良い。強気・強気でチャレンジする面構えだ。常に切れ切れで、ファイトに溢れかえっている様に見える。ラグビー選手としての好感度大である。
この日、右FLの奥平選手➀は先発デビュー&初トライを飾った。甘いマスクは子供っぽく、まだまだ1回生と言う感じだが、プレーはそれとは異なる。同志社では伝統的に優秀なフランカーが続出しているが、奥平選手も間違いなくその一人と確信出来た試合だった。
天才的な臭覚を持っているのだろうか、何しろ運動量が多くボールに絡む機会が多い。ノビシロが多そうで楽しみな逸材である。
今年の同志社は、実にバランス良く選手層が厚くなったなぁ・・とツクヅク思う。
この人の活躍を忘れちゃいけない!
天理戦勝利の立役者は、やはりMOMを獲得したNo.8梁本選手③である。梁本選手と言えば、昨シーズンの関西リーグ(滋賀での京産戦)公式戦を名神高速事故渋滞で欠場したことで有名(?)だが、今年の活躍には素晴らしいものがある。体も更に大きくなった。
本職はフランカーなのだろうが、NO.8を立派にこなした。木原選手④も肝を冷やしたであろう。(木原選手に加え、稲吉選手が復帰したらと思うと笑いが止まりませんなぁ~~)
顔が良い!精悍な野武士の顔である。
後半33分、敵ゴール前、20数メートル。敵ディフェンス陣3人のタックルを文字通りなぎ倒して、一直線にゴール下に駆け込んだ。その速いこと、速いこと。(敵の防御網を)「切り裂く」とは、正にこのことである。このトライが同志社の勝利を決定付けた。
後半24分、WTB和田選手④のトライも見事だった。ボールを受けるや否や密度の濃い敵ディフェンス網の左サイドライン間際を縦に一直線に、正に飛ぶように駆け抜けた。
そのスピードの天理ディフェンス陣のタックルが全く追い付けなかった様に見えた。
最後となるが、この日トライこそなかったが、同志社の牛若丸FB山口選手④の活躍である。写真を撮影していると山口選手とファインダー越しに出くわす場面が多い。登場場面が並外れて多いのだ。
ただし、写真枚数は少ない。それだけ、密集で勝負し人と絡むことが多いのだ。そして踏ん張ること、踏ん張ること・・・。
決して蹴らない。決して逃げない。敵の密集の隘路に一人果敢に臆面なく飛び込む。敵ディフェンス網を掻き回し、混乱させる。
まだまだ、これから・・・
言うまでもないが、所詮は春シーズンである。喜んでいる暇はない。肝心の秋シーズンに向けて、どうチーム力を向上させていくのかが今後の鍵となる。恐らくは今回、双方のチームとも考え抜いたゲームプランで戦ったのではないだろう。
そういう意味では、まだまだこれからで、ほんの一ステップにしか過ぎない。ただ、明らかに同志社のチーム力は大きく向上しており、若手の台頭等、バランスよくチーム層が厚くなって来ている。
明るい近未来が描けた。心底、同志社ラグビーのこれからが楽しみである。
今回の勝利は、同志社が強くなったのも事実であり、天理が昨年より少しチーム力を落としていることの証左でもあろう。ただ、同志社は、京都産業戦で薄氷の勝利を得たように圧倒的な強さを持ち合わせているわけではないと思われる。
その意味で、秋の関西リーグ、大学選手権に向けて、やはり「まだまだ、これから…」であろう。まずは夏合宿をどう乗り切るかだが・・。 (文責:F)
(注)当コラムは、DRFCを代表する見解ではなく、あくまで一個人の見解です。
ご意見や見解の異なることも多々あろうかと存じますが、その節はスルーしてください。
写真は、必ずしも文章と対応していません。
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